髙橋海人のKAITOは商標的に大丈夫?本名でも守られない場合を解説

2026年10月4日の昼すぎ、特許庁のデータベースへのリンクが、Xで広く回りました。
King & Princeの髙橋海人が、前の日に「KAITO」の名前でソロ活動を始めると発表したばかり。
ところが「KAITO」は、20年前からボーカロイドの名前として使われてきた名前でもあります。
ネットでは「本名なんだから自由でしょ」という声と、「KAITOは商標が取られている」という声がぶつかっていました。
本名なら、商標は関係ないのか。
今回は、髙橋海人のKAITOは商標的に大丈夫なのか、本名でも守られない場合があるのかを、登録の中身と条文からわかりやすく解説していきたいと思います。
「本名だから」と「商標がある」がぶつかっている
発表は2026年10月3日の夜でした。
髙橋海人は「KAITO」としてソロ活動を始め、1stデジタルシングル「swim?」を10月5日の0時に配信すると、所属レコード会社のユニバーサルミュージックの公式サイトなどが伝えています。
「KAITO」は、本名の「海人(かいと)」をローマ字の大文字にした名前です。
ユニバーサルミュージックの公式サイトでも、アーティストページの名前はそのまま「KAITO」。
髙橋海人は2018年にKing & Princeのメンバーとしてデビューしていて、KAITOの名前で曲を出すのは今回がはじめてです。
ところが同じつづりの「KAITO」には、20年の歴史があります。
札幌のクリプトン・フューチャー・メディアが2006年に発売した、男性の声で歌うボーカロイドで、東スポWEBは「世界初の日本語男声ボーカロイド」と紹介していました。
ファンからは「兄さん」と呼ばれ、たくさんの曲と絵がこの名前の下で作られてきたそうです。
東スポWEBによると、King & Princeの公式Xが「#KAITO」のハッシュタグを付けたことで、X上では2人のKAITOの投稿が入り乱れたとのこと。
ボーカロイドの側からは、こんな声が上がりました。
KAITOが本名だからって言ってる方もいますが、本名は髙橋海人ですよね?😢
KAITOが本名なのはこちらです、年齢を指摘されている方もいますが先にKAITOを使用しているのもこちらです😭
本名で活動するのならいくらでも表記方法がある中、アルファベットの大文字表記で被せてきたのが……😭😭— しの🍡 (@97wxwx) 2026年10月4日
本名は漢字の「髙橋海人」で、同じ大文字の書き方を選んだことに引っかかっている、という言い方です。
長く大事にしてきた名前の目印が、ひと晩で別の人のものに見えてしまう。
しんどくなる気持ちは、よくわかります。
いっぽうKing & Princeのファンからすれば、自分の名前を名乗っただけなのに、と感じるのも無理はありません。
この記事では、どちらが正しいかは決めずにおきます。
見ていくのは、決まりの側に何が書いてあるかです。
登録されているKAITOは青いロゴの形
特許庁の「J-PlatPat」では、商標の記録を誰でも無料で見ることができます。
昼すぎに回っていたのも、そのページへのリンクでした。
KAITOは商標登録等されているのか、といった疑問の解決に役立つと思うため、URLを貼らせていただきます。https://t.co/MjmIpr103t
— 夜月紫苑 (@y_shion_p) 2026年10月4日
実際に開くと、クリプトン・フューチャー・メディアの「KAITO」が、登録番号5807269として出てきます。
出願は2014年4月21日、登録は2015年11月20日で、2025年10月には権利を続けるための手続きも済んでいて、いまも生きている権利です。
登録されている見本は、青いメタリック調の文字で描かれたロゴでした。
記録には「色彩有り」ともあり、色まで含めた形での登録だと分かる書き方です。
ただ、同じ記録には「カイト」「カイトー」という読み方も添えられています。
区分は第9類・第25類・第28類の3つです。
商標は、商品やサービスを45の区分に分けて登録する仕組みで、第25類は服、第28類はおもちゃなどの区分にあたります。
気になるのは第9類で、そこには「インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル」「音楽を録音済みのコンパクトディスク」という言葉がありました。
ネットでは「ロゴの登録だから名前として使うのは関係ない」という声と、「音楽の区分で取られているからまずい」という声の両方が出ています。
どちらも、登録の中に根っこのある話です。
登録はロゴの形で、そこに読み方と音楽ファイルが並んでいる、というのが記録に書いてあることのすべてでした。
商標の権利が及ぶのは、登録した商品と同じか似た商品に、同じか似た商標を使う場面だと、商標法は書いています。
似ているかどうか、同じ商品に当たるかどうかを、外から言い切ることはできません。
ちなみにJ-PlatPatは、気になる名前を自分で調べるときにも便利。
トップページの簡易検索で「商標」を選び、調べたい文字を入れるだけで、登録の見本と区分と持ち主がそのまま出てきます。
一覧の「ステータス」が「存続」になっていれば、その権利はいまも生きているという意味です。
自分の店やアカウントに名前を付ける前に、一度のぞいておくと安心ですね。
本名でも守られるのはフルネームか有名な芸名
では「本名だから大丈夫」という考え方は、法律のどこに書いてあるのでしょうか。
答えは、商標法の第26条にあります。
商標の権利が及ばないものとして挙げられた、第1項第1号の文言はこうです。
「自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標」
少し読みにくいので、並んでいるものを取り出すと、こうなります。
- 自分の顔(肖像)
- 自分の氏名(会社なら名称)
- 有名な雅号・芸名・筆名
- それらの有名な略称
目を引くのは、「氏名」と「芸名」で書き方がちがうところ。
氏名にはそのまま「自己の」と付いているのに、芸名のほうにだけ「著名な」という言葉が付いているんです。
氏名は、一般には名字と名前をそろえた形だと解説されています。
つまり、本名なら何でも守られる、とは条文に書いていません。
守られるのは自分の氏名か、すでに有名になった芸名で、しかも「普通に用いられる方法で」使うことが条件。
この「普通に用いられる方法」は、特別な飾り文字やロゴにせず、ふつうの書き方で示すことだと解説されています。
さらに同じ第26条の第2項には、商標の登録があったあとに「不正競争の目的」で使った場合は、この決まりを当てはめないという一文。
どのくらい知られていれば「著名」なのかは、条文に数字では書かれていません。
KAITOという名前での活動は、10月3日に始まったばかりです。
下の名前だけをローマ字の大文字にした「KAITO」が、このどこに当たるのか。
それを決めるのは、当事者どうしの話し合いと、争いになったときの裁判所です。
ネットにも、まずは公式からの説明を求める声がありました。
KAITO騒動結局はKAITOの商標登録が
・音声合成ソフトにおいて新規キャラクターにKAITOという名前は付けられない
・KAITOという文字列ごと商標登録なのかで話変わってくるので公式が声明文出すのが確実であり、もしどちらもKAITOは名乗れるよって言われたら両ヲタクは黙るしかない
— 笹 (@otsukiml) 2026年10月4日
本名だから自動的にセーフでも、商標があるから自動的にアウトでもありません。
条文が言っているのは、そこまでです。
名前に一語足して並んだ前例
同じつづりの名前がぶつかったとき、相手に合わせて名前を変えた例は、音楽の世界にもあります。
よく知られているのが、大貫亜美と吉村由美のPUFFYです。
日本ではいまもPUFFYの名前で活動していますが、アメリカでは「Puffy AmiYumi」を名乗ってきました。
2000年にアメリカの音楽イベントに出たあと、「Puffy」の愛称でも知られていたラッパーのショーン・コムズ側から、名前を変えるよう求められたためと伝えられています。
2人は当時、アメリカの雑誌の取材に、向こうでPuffyといえばあの人のことだからと、相手の名前を尊重する言い方をしていたそうです。
2人の名前を後ろに足したことで、どちらのPuffyかが一目でわかるようになりました。
その名前のまま、2人を主人公にしたアニメ番組がアメリカで作られるほど広まったのですから、一語足したことは足かせにはならなかったようです。
今回も、ボーカロイドの側から出ている声の多くは、名前そのものより目印の重なりを心配する声。
タグや表記に一語足すだけで、探す人が迷わずに済むこともあるはず。
そして心配は、髙橋海人の側にもあります。
ちなみに今一番恐れてるのはKAITO兄さんにとばっちりが来るんじゃなくて高橋海人さんに風評被害が行くこと
同じ名前ってだけで仕事を選ばないとか裸芸やる人とかって本来と違うイメージが飛ぶこと
棲み分けしないとエライ事だゾ— 宵崎・ルナ・ネクロ (@runanekuroaka) 2026年10月4日
同じ名前で検索されれば、本人とは関係のないイメージと混ざってしまうおそれもあるんです。
どちらかが我慢するより、どちらも見つけやすい形を探す。
PUFFYの例は、そのひとつの答えでした。
2024年からは同意で並び立てる道がある
2024年4月1日から、商標には「コンセント制度」という新しい仕組みが加わっています。
特許庁の説明によると、先に登録された商標と似ている商標でも、先に登録した人の同意があり、取り違えのおそれがないと認められれば、登録できるという制度です。
仕組みの中身は、特許庁のホームページにある「コンセント制度の導入」というページで、誰でも読めるようになっていました。
これまでの日本の商標の制度には、この形の決まりがなく、いったん権利を譲ってもらって登録し、あとで戻すという回り道が使われていたと解説されています。
しかも、取り違えが起きないかどうかは、同意があっても特許庁の審査であらためて見る仕組みになっているんです。
同じつづりの名前でも、話し合って並ぶための入口が、いまは法律の中に用意されています。
もちろん、髙橋海人の側が「KAITO」を商標として登録しようとしているかどうかは分かりません。
クリプトン・フューチャー・メディアからも、髙橋海人の側からも、商標についての説明は10月4日の夜の時点で見当たりませんでした。
ファンの書き起こしでは、髙橋海人は10月4日の生配信で、名前を決めるのに悩んだことや、ボーカロイドのKAITOのことにも触れていたと伝えられています。
海人くん本人も配信でソロ名義を決めるのは悩んだって話してた。事務所にもカイトは沢山いる事、そしてボカロのKAITOさんについてもレジェンドとリスペクトを込めて話してた。
「海人」や「Kaito」でもよかったのでは?って意見もあるけど、キッズダンサー時代も大文字のKAITO名義で活動してたし、— いと (@miel_1999) 2026年10月4日
キッズダンサー時代の名義については、確かめられる資料は見つかっていません。
法律の側から見ても、白黒はまだついていないのが、いまの状態。
だからこそ、両方の公式から一言あるだけで、ずいぶん空気は変わるはずです。
「swim?」の配信は、今夜0時。
配信が始まれば、音楽配信サービスのアーティスト名にも「KAITO」が並びます。
2人のKAITOがどう並んでいくのか、まずは両方の公式からの言葉を待ちたいところですね。
