各務原6階投げ落とし事件|警察が有能すぎる件

2026年9月26日の未明、岐阜県各務原市のマンションで、25歳の父親が4歳と1歳の娘を6階のベランダから投げ落としたとして逮捕されました。
あの高さから落とされて、それでも娘たちはどちらも、病院へ運ばれたときには意識があったそうです。
助けたのは、事件が起きる前から下で待っていた警察や消防でした。
ネットには警察をたたえる声が並び、そのいっぽうで、こんな疑問も出ています。
「娘2人が無事だったからこの男の罪は軽くなるの?」
今回は、この夜に警察が何をしていたのかと、子どもが助かったときに殺人未遂の罪がどう扱われるのか、そして娘たちを父親から守る手だてを、わかりやすく解説していきたいと思います。
「腕をつかまれた」から始まった5時間
始まりは、前の日の夜にかかってきた通報でした。
2026年9月25日の午後11時半ごろ、父親の妻から「夫婦げんかで夫に腕をつかまれた」という通報があったと、CBCテレビが伝えています。
共同通信によれば、この部屋で暮らしていたのは父親と妻、それに娘たちの家族。
駆けつけた警察官は、マンションの中で妻を保護していたそうです。
ところが父親は、事情を聴こうとする警察に応じないまま、自宅の部屋に閉じこもってしまったといいます。
母親は保護されていても、幼い娘たちは父親と一緒に、その部屋の中に残されたまま。
部屋の外と中のにらみ合いは、夜明け前まで続いたそうです。
26日の午前4時20分ごろ、警察が部屋へ入ろうとしたそのときに、父親はベランダから娘2人を下へ投げ落としたとされていて、通報からはおよそ5時間がたっていました。
近くの防犯カメラには、マンションの前に多くの人が集まるなか、上の階から2回続けて何かが落ちてくる様子が映っていたと、メ~テレが伝えています。
父親は殺人未遂の疑いで現行犯逮捕され、調べに対しては黙秘しているそうです。
現行犯逮捕というのは、罪を行っている最中や行い終えた直後の人を、逮捕状なしで捕まえることを言います。
黙秘は、自分に不利になることを話さなくてよいという、憲法で認められた権利です。
ただ、連れて行かれるときの父親の言葉を、近くの住民が聞いていました。
メ~テレの取材に、住民は「俺も一緒に死ぬつもりだったと話しながら、警察に連れていかれる様子を上から見た」と答えています。
自分で身を守ることなど、まだ何ひとつできない年の姉妹。
速報を見た人の怒りは、飾りのない言葉でそのまま並びました。
【速報】4歳と1歳の娘2人をマンション6階から投げ落とす。25歳父親を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕。
2人は消防が設置したマットに落下し命に別条なし。震えるほどムカつんだけど。なんなんこの男💢
— 183くん (@0915_taka_) September 26, 2026
いちばん先に来るのは、やはりこの気持ちですよね。
6階の下に敷かれていた救助マット
それにしても、6階です。
本当に、よく助かってくれたと思います。
2人を助けた手は、いくつも重なっていました。
CBCテレビによると、警察は閉じこもりが続くあいだ、不測の事態に備えてマンションの下にマットを敷き、大勢の警察官を待機させていたそうで、ぎふチャンDIGITALは、2人が落ちたのは消防が敷いた救助用のマットの上だったと伝えています。
中日新聞によると、それは消防がマンションの駐車場に敷いたエアマットで、近くに住む30代の男性は、午前3時ごろに物音で目を覚ますと、建物の周りに警察官や消防士20~30人が集まっていたのを見たそうです。
エアマットは、高いところから飛び降りるしかない人を受け止めるために、空気でふくらませて使う大きな救助用のマットのこと。
さらに共同通信によると、地上にいた警察官らが女の子2人を受け止めたそうです。
マットを敷いたうえで、人の手でも受け止めにいく、という二段構えでした。
搬送のときはどちらも意識があり、命に別条はないとみられています。
けがの程度について、9月26日夜の時点では、詳しく伝えている報道はまだ見当たりません。
通報からの5時間を、警察と消防は「もしも」の準備に使っていました。
警察が有能すぎる、と言いたくなるのは、まさにこの準備の部分。
ネットにも「こんなありえん事態本当に不測すぎるのにマット敷いてた警察すご…」という声がありました。
子どもの命を日々診ている小児科医も、同じところに目を留めています。
一緒に死ぬと幼い子ども2人を連れ去り立てこもった挙句6階から落とした父親はとんでもないが、不測の事態に備えマットを敷き子供達の命を救った警察、ナイス過ぎんか
— ふらいと@小児科医・新生児科医(今西洋介) (@doctor_nw) September 26, 2026
父親への怒りと、警察への感謝が、同じ一文に並んでいるんですよね。
子どもが助かったら罪は軽くなるのか
助かって本当によかった。
でも、それで罪が軽くなるのは、どうしても納得がいかなくて。
ネットに並んだ「納得いかん」は、この2つの気持ちがぶつかった声なのだと思います。
まず、父親にかけられている疑いは殺人未遂です。
メ~テレの報道では、娘2人を投げ落として「殺害しようとした疑い」が持たれている、と伝えられています。
つまり、けがをさせる罪ではなく、命を奪おうとした罪での逮捕です。
小さな子どもをあの高さから落とせば命を落とすかもしれないと分かっていたはずだ、と警察はみているのでしょう。
刑法の第203条は、殺人をしようとして遂げられなかった場合、いわゆる殺人未遂も罰すると定めています。
そして殺人罪の第199条は、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。」という条文。
拘禁刑というのは、それまでの懲役と禁錮がひとつにまとまった呼び方です。
未遂であっても、殺人と同じ「死刑・無期・5年以上の拘禁刑」の範囲で刑が考えられるんですね。
けがをさせる傷害罪なら、第204条で「十五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」なので、重さがまるで違います。
では、子どもが助かったことは、どこで関係してくるのでしょうか。
答えは、刑法の第43条にあります。
「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。」
大事なのは、「減軽することができる」という書き方。
軽くしてもいいし、しなくてもいい。
決めるのは裁判所で、必ず軽くなるとはどこにも書かれていません。
ちなみに軽くする場合、期間の決まった拘禁刑なら、上限と下限をそれぞれ半分にすると定められています。
そして同じ条文には、続きがあるんです。
「ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」
自分でやめた人だけは、必ず軽くするか、刑を免除する、と書かれています。
法律の世界では、自分でやめた場合を中止未遂、外からの力で遂げられなかった場合を障害未遂と呼び分けているとのこと。
刑法が目を向けているのは、結果が出なかったことより、本人が自分でやめたのかどうか。
今回、報道で伝えられている経緯は、警察が部屋へ入ろうとしたときに投げ落とし、下で待っていた警察官らが受け止めた、というものでした。
父親が自分で思いとどまったわけではありません。
どう判断されるかはこれからの裁判で決まることですが、子どもの命をつないだのは、父親の手ではなかったと思います。
ネットには、こんな声もありました。
警察グッジョブだけでなく、4歳と1歳の娘を6階マンションから突き落とした父親についての刑罰を皆で真剣に考えたい。一生出てきてほしくないんだが。
— 音山田ももも (@KASE333333) September 26, 2026
実はこの事件、市民が裁判員として刑を考えることになるかもしれません。
裁判員法は、「死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件」を、裁判員が加わる裁判の対象にしています。
殺人未遂は殺人と同じ枠の刑が定められているので、この対象に入るんですね。
起訴されれば、原則として、くじで選ばれた市民6人が、裁判官3人と一緒にこの事件の刑を考える場になるはずです。
娘たちを父親から守る手だてはあるのか
娘たちを、この父親に二度と会わせないでほしい。
ネットには、そんな願いも書き込まれていました。
民法には、「親権は、父母が共同して行う。」とあります。
結婚している夫婦は、いまも父母ふたりで親権を持っている状態です。
そのうえで、2026年4月1日に施行された改正民法で、離婚したあとも父母ふたりで親権を持つ「共同親権」を選べるようになりました。
これを聞いて、ぞっとした人もいるかもしれません。
ただ、同じ民法には、裁判所が必ず片方だけを親権者にしなければならない場合が書かれています。
最初に挙げられているのが、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき」。
続けて、父母の一方がもう一方から暴力などを受けるおそれがあって、ふたりで親権を行うのが難しいときも挙げられています。
子どもに危険があると認められる場合も、親どうしの暴力で一緒に親権を行うのが難しい場合も、裁判所は片方だけを親権者にしなければなりません。
共同親権は、どんな親にも自動で付いてくるものではないんです。
さらに、離婚とは別の道も。
民法には、期間を区切って親権を止める「親権停止」と、親権そのものを失わせる「親権喪失」も定められています。
申し立てができるのは子ども本人や親族、検察官で、児童福祉法によって児童相談所の所長も申し立てられるとのこと。
もちろん、この家族について何がどう決まるのかは、まだ何も報道されていません。
そして、娘たちを守る手だての出発点になったのは、最初の110番でした。
4歳と1歳を6階から投げ落として殺人未遂?
意識はあるって、6階だぞ?と思って調べたら
DVを受けた妻が通報し、駆けつけた警察が未然に防いだと……すごいな妻と警察がいなかったら子供2人は亡くなってた
— 女たちのデータベース広場 (@females_db_park) September 26, 2026
「腕をつかまれた」くらいで通報していいのか、と迷ってしまう気持ちも、分からなくはありません。
でも今回は、妻の1本の電話があったから、警察は事件の前から部屋の外にいて、マットを敷く時間を持てました。
しかも児童虐待防止法は、子どもが同居する家庭での配偶者への暴力を、子どもへの虐待の1つとして数えています。
子どもの前で起きている夫婦げんかの暴力は、夫婦だけの問題では済まされません。
身の危険を感じたら、迷わず110番へ。
不安が続くときは、#8008にかけると近くの配偶者暴力相談支援センターにつながります。
よその家の子どもが心配なときは、児童相談所の虐待対応ダイヤル189(いちはやく)へ。
父親がなぜこんなことをしたのかは、まだ分かっていません。
どんな事情があったとしても、幼い子どもを6階から投げ落とした行いは、許されるものではないと感じます。
ただ、この夜の結末を分けたのは、通報をためらわなかった母親と、下で手を伸ばしていた人たちでした。
受け止めてもらった2人が、この先は安心して眠れる場所で大きくなっていけることを、心から願いたいですね。
