くら寿司ちいかわのフィギュアが出ない|疑いが晴れない本当の理由

くら寿司が『ちいかわ』とのコラボキャンペーンを始めたのは、2026年8月21日でした。
4回目となる今回も、食べ終えた皿を5枚入れるとゲームが1回まわる、いつもの「ビッくらポン!」です。
ところが8月の終わりごろから、ネットに同じ形の報告が並び始めました。
当たっているのに、フィギュアだけが出ないまま。
1万8000円分食べて、17回当たって、フィギュアはゼロ。
そんな投稿が次々に続いて、いまは「店員が抜いているのでは」という話にまで広がりました。
今回は、この騒動で何が起きているのかについてわかりやすく解説していきたいと思います。
17回当たってフィギュアは0個
まず、いま出回っている数字から。
キャンペーンの景品は3種類です。
フィギュアが全5種、缶バッジが全8種、アクリルマグネットが全8種。
このうち子どもも推し活勢も狙っているのが、フィギュアです。
弁護士ドットコムニュースが9月1日に配信した記事では、「1万8000円分食べて、17個当たったんだけどフィギュア0」「同じく16個で0でした」という投稿が紹介されていました。
17回当たって、21種類のうちの5種類だけが1つも来ないという結果。
くじ運が悪い日、で片づけるには回数が多すぎます。
ネットには、もっと具体的な報告も出ていました。
「ほぼ満タンに入っていたのを空にしたのに、フィギュアは1個も出なかった」。
「カプセルの色でキャラがわかるけれど、人気キャラの色だけがどのテーブルの筐体にも見当たらない」。
「缶バッジばかりだったので、フィギュアと交換してもらえないか店で聞いてみた」という声も出ていました。
どれも、その場に立って見た人にしか書けない話です。
そこへ、フリマサイトの画面が重なりました。
報道によると、キャンペーンの初日早々から、フィギュアがかなりの数出品されていたそうです。
しかも同じ出品者が、5種類そろったセットをいくつも並べていく。
17回当たってゼロの人がいる横で、コンプリートセットが何組も売られている光景。
この2枚の画面が並んだ瞬間に、「誰かが抜いている」という見方が一気に広がりました。
うーん、これは疑いたくもなります。
くら寿司とちいかわのコラボは、今回で4回目です。
ネットには「前回のコラボのときも、目当てのフィギュアだけ当たらなかった」という書き込みも混ざっていました。
1回きりの不運ではなく、前もそうだった気がする。
その記憶が乗っているぶん、今回の受け取られ方は強くなっています。
くら寿司が明かした補充のやり方
投稿が広がりはじめた8月の終わりに、くら寿司が説明を出しました。
J-CASTニュースの取材に、広報部が8月31日に答えた内容です。
「カプセルの補充につきましては、1つの筐体に全種類を均等に入れるルールではなく、複数種類が混在する箱からランダムに補充する仕様となっております」。
続けて「そのため、特定の種類が連続して排出されない、あるいは偏りがあるように感じられる状況が発生することがございます」とも書かれていました。
かみ砕くと、こういうことです。
あの筐体は、21種類を均等に詰めた箱ではないということ。
いろいろ混ざった大きな箱から、すくって入れていく。
だから、ある店のある筐体だけフィギュアがほとんど入っていない、ということが仕組みのうえで起こりえます。
つまり会社は「偏りは想定内です」と答えたわけです。
ここが、火に油になりました。
ネットにはすぐ、「なら、偏らないように対策しろよ」という声が並びます。
偏る仕組みなんですと説明されても、17回外した人の手元には何も戻ってきません。
もう1つ押さえておきたいのは、この説明が「筐体ごと」の話だということ。
客が向き合うのは、自分のテーブルにある1台だけです。
店全体でならせば偏っていなくても、その1台に入っていなければ、その人にとってはゼロのまま。
会社は、こうも言い添えていました。
「万が一、不適切な事案や不正・過誤が疑われる事例が確認された場合には、事実関係を厳正に調査の上、社内規定に基づき適切に対処してまいります」。
フードジャーナリストの山路力也が9月2日に書いた記事でも、「景品や商品の取り扱いおよび管理について厳格なガイドラインを定め、適切な運用に努めております」というコメントが紹介されています。
不正があったとは、まだどこも言っていません。
そして、無かったとも言い切っていない、というところ。
疑いをぶつける先がレジ前しかない
ここで、この騒動の形が見えてきます。
会社の説明を、もう一度並べてみましょう。
偏りは仕様。
不正は「確認された場合」に調べる。
この2つを足すと、確認されるまでは何も始まらない、という形になります。
では、誰が確認するのでしょうか。
客の側には、確認する手立てがないんです。
自分が何回まわして何が出たかは分かっても、その筐体に最初から何が入っていたかは見えません。
ネットにも「全部の景品が最初から入っていたのか、今となっては証明できない」という書き込みがありました。
これが、この騒動でいちばん静かで、いちばん厄介な一行だと思います。
証明はできないのに、納得もできないまま。
その行き場のない気持ちが、どこへ向かうか。
目の前に立っている店員です。
ネットには、こんな報告も上がっていました。
「店員さんに、中抜きしてるんでしょって詰め寄っている人がいて、泣きそうになっていて可哀想だった」。
その店員が抜いたという話は、どこにも出ていません。
ただ、客が疑いを言葉にできる相手が、レジ前に立っているその人しか残っていなかった。
この件は「フィギュアが出ない」話に見えて、実は疑いの受け皿が現場のレジ前にしか用意されていない話なんです。
本部は「確認されたら調べます」と言い、確認する手段は客の側になく、間に立たされるのはシフトに入っている人。
その人は、その日たまたまそのテーブルの担当になっただけ。
コラボの企画を決めた人も、補充の仕様を決めた人も、その場にはいません。
景品表示法は当たりやすさを決めない
ここからは、今回に限らず使える話をします。
こういう騒動になると、必ず「景品表示法に引っかかるのでは」という声が出てきますよね。
今回も「ランダムで片づけるなら景品表示法はいらない」という書き込みが目に入りました。
ところが、消費者庁が定めている景品規制の中身を見ると、少し意外なことが書いてあります。
決めているのは、金額の上限だけなんです。
くじのように偶然で景品が当たるものを「懸賞」と呼びます。
そのうち一般懸賞では、買い物1回あたりの金額が5,000円未満なら、景品の最高額はその金額の20倍まで。
総額のほうは、そのキャンペーンの売上予定総額の2%以内。
表に並んでいるのは、この2つだけ。
当たりやすさも、種類ごとの配分も、どれくらいの頻度で出るのかも、そこには書かれていません。
だから「フィギュアが出にくい」というだけでは、すぐに違反という話にはならないわけです。
ここが、多くの人の直感とずれているところ。
ついでに言うと、同じキャンペーンでも先着でもらえるプレゼントは別のルールで動いています。
今回なら、第1弾のミニ巾着が先着80万名、第2弾の湯呑みと第3弾の寿司皿がそれぞれ先着100万名。
買えば必ずもらえるタイプは「総付景品」と呼ばれて、こちらは買い物金額の10分の2までと決まっています。
同じ店の同じ日に、数を約束している景品と、当たりやすさを約束していない景品が並ぶ。
モヤモヤの半分は、この2つを同じ「景品」という言葉でひとくくりに見ているところ。
もちろん、話が変わる場合はあります。
「必ず当たります」と書いてあったのに実際には入っていなかった、というように、表示と中身が食い違えば、そこは表示の問題。
ただ今回は、くら寿司のほうから「均等に入れるルールではない」という説明が先に出ました。
出にくいことを隠していたわけではない、という形。
法律で殴れると思って読みにいくと、たいてい空振りです。
先に知っておくと、次に同じ騒ぎに出くわしたときに、力の入れどころを間違えずに済みます。
4年前のジャンプショップで起きたこと
もう1つ、覚えておくと見え方が変わる前例があるんです。
2022年9月14日、「JUMP SHOP」を運営するベネリックが、公式サイトで謝罪を出しました。
大阪心斎橋店に勤務していた従業員が、2021年4月から2022年1月にかけて、店舗で配っていた「お買い上げ特典」を着服し、不正に転売していたというものです。
対象になったフェアは、分かっているだけで9つ。
その従業員は就業規則にもとづいて懲戒解雇となり、集英社からも「絶対にあってはならない」とする声明が出されました。
従業員が特典を抜いて売る事案は、実際に起きたことがあります。
今回の疑いを頭から否定できない理由は、ここにもあるわけです。
ただ、この件でいちばん見ておきたいのは、そこではありません。
数えて外へ出したのは、会社のほうでした。
公式サイトに文書を出して、対象の期間に買った客へ特典を配り直すところまでやっています。
フェアの本数まで特定できたのも、内側に記録があったからこそ。
在庫の記録を持っているのは、いつでも会社の側です。
だからこの手の疑いが晴れるかどうかは、ネットの盛り上がりの大きさではなく、会社が自分で数えて外へ出すかどうかで決まります。
くら寿司が言った「確認された場合には」の、その確認をする側にいるのも会社なんです。
ハズレが続いた日に残しておくもの
では、こちら側にできることは何もないのでしょうか。
そんなこともありません。
というより、できることは1つだけ、とてもはっきりしています。
その場で、記録を残しておくことです。
- 日付と店舗名
- 何回まわして、何が出たか
- 筐体の中の見え方
スマホで1枚撮っておけば、それで足ります。
これは証拠を集めて戦うため、という話ではありません。
会社があとから調べるとき、いつ・どの店で・どれくらいの規模で起きていたのかが分かる材料は、外側にはこれしかないからです。
実際、今回もネットに上がった写真と回数の報告が積み上がったから、会社が説明を出すところまで来ました。
同じ日に行った人の記録が並ぶと、店ごとの差もそこで見えてきます。
そして、もう1つ。
レジの向こうにいる人に詰め寄っても、たぶん何も出てきません。
その人は補充の仕様を決めていませんし、箱の中身も見ていないはずです。
言う先は、店ではなくお客様相談窓口のほう。
ネットには、問い合わせたけれど返事がまだ来ていない、という書き込みもありました。
すぐには返ってこないかもしれません。
それでも、窓口に届いた件数は数字として残ります。
レジ前でぶつけた一言のほうは、どこにも残らないんです。
ランダムという説明そのものは、嘘だとは限りません。
ただ、あの言い方でいちばん救われないのは、17回外した親子と、レジ前で頭を下げている店員のほうだったりします。
くら寿司が自分で数えた結果を出してくるのか、9月30日までのあいだ見ていきたいところですね。
