家族への書き込みを2年かけて追いかけて、たどり着いた相手は50代の無職でした。

フィッシャーズのリーダー・シルクロードが、2026年11月2日に公開した動画「開示請求しました」で明かした話です。

相手は面識のない、地方に住む人物とのこと。

しかも別の件で、いまは逮捕されているそうです(どんな件かは、個人の特定につながるとして明かされていません)。

ネットにはすぐ、「無職から金なんて取れるの?」「無い袖は振れない」という声が並びました。

せっかく突き止めても、払えない相手なら泣き寝入りになるのか。

今回は、シルクロードの開示請求で何があったのかと、無職の相手から賠償金は取れるのかを、法律の条文からわかりやすく解説していきたいと思います。

妻と子どもにまで向いた2年分の書き込み

報道によると、始まりは2年ほど前、YouTubeに家族を巻き込む書き込みを続けるアカウントが現れたことでした。

矛先はシルクロード本人だけでなく、妻でYouTuberのゆん、そして子どもにまで向いていたといいます。

書かれた中身は、「口に出すのも嫌なぐらい本当にひどいこと」とだけ。

ちょうど子どもを授かった時期で、本人は当時をこう振り返っています。

「そういうときになんかそういう嫌な言葉みたいの見ると響くんですよ。影響出るんですよ」

そして、「何よりやっぱ家族を守るためにもこれ1回やらんといけないわと思って」と、踏み込んだ理由を語りました。

手続きは、所属事務所のUUUMのマネージャーや弁護士と相談しながら進めたそうです。

相手の名前も住所も「僕は全部知ってる状態です」としたうえで、いまは損害賠償の請求を検討している段階とのこと。

視聴者には、相手を特定しないよう呼びかけています。

 

動画には、この相手とは別の人物とのやりとりも。

最近の生配信で「殺すぞ」と書き込まれ、「俺マジでやるからな」と返したところ、ほんの数分後に「許してください」と来たそうです。

この話のあとで、シルクロードは「俺やるんだよ」と言い切りました。

 

開示請求の名目は著作権侵害だった

報道の中で少し意外だったのは、開示請求に使った名目。

シルクロードが使ったのは、「著作権侵害」という名目だったそうです。

相手は、無断で動画や画像を使ったうえで、あることないことを書いていたとのこと。

なぜその名目を選んだのかまでは、報道からは分かりませんでした。

 

開示請求は、「権利が侵害されたことが明らか」だと認められないと通りません。

悪口を名誉毀損として訴える場合は、書かれた内容が本当ではないことなども、請求する側が示さなければならないとされています。

これに比べると、動画や画像を無断で使ったかどうかは、元の動画と並べれば確かめられるもの。

悪口と無断使用が一緒に書かれていたなら、無断使用は「明らか」を示しやすいと考えることもできそうです。

開示請求には期間も労力も費用もかかるとしながら、シルクロードは「やるときは徹底的にやる」と話しています。

メンバーのモトキも、同じ日にこの動画を自分のアカウントで広めていました。

スマホの画面から匿名のコメントが浮かび、虫めがねの光が当たっているイラスト
開示請求の闇…脅し文句で終わる人と本気で動く人の違いネットで「開示請求します」という一言を見かける機会が増えました。 正式には発信者情報開示請求といって、匿名の書き込みをした人が誰なのか...

無職の相手から賠償金は取れるのか

ネットで繰り返し上がっていたのが、この疑問です。

正直に言うと、財産が何もない相手からは、すぐにはお金を取れません。

なにしろ差し押さえるものが無ければ、裁判で勝っても手元には何も入らない。

その意味で、「無い袖は振れない」は半分は当たっているんです。

 

でも、裁判で決まった支払いの権利は、民法169条で10年は消えないと決められています。

いまは無職でも、そのあいだに働き始めたり、預金や家を持ったりすれば、そこから取りに行けるんですよね。

しかも、財産を隠させない仕組みまで用意されています。

  • 財産開示手続=裁判所に呼ばれ、自分の財産を答えなければならない
  • 来なかったり嘘を言ったりすれば、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
  • 銀行の預金や登記された家・土地は、裁判所を通して銀行や登記所から聞き出せる

この罰は、2020年4月の法改正で、それまでの30万円以下の過料から刑事罰へと重くなったもの。

さらに、破産すれば支払いが消える、とも限りません。

破産法253条は、「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は破産しても消えないと定めています。

誹謗中傷がこれに当たるかは裁判所が判断することですが、破産すれば必ず逃げられる、とは言い切れないんです。

 

ただし、裁判所を通して市役所や年金機構から勤め先を教えてもらう仕組みは、養育費や、命や体を傷つけた損害賠償などにしか使えません。

誹謗中傷の賠償は、この一覧の外。

だから相手が働き始めても、勤め先は財産開示の場で本人に答えさせるしかない。

名前と住所が分かったあとも、取り立てまでには長い時間がかかる、というのが実際のところでしょう。

シルクロード自身も、損害賠償は「すぐ払えるようなやっぱ金額じゃなかったりとかする」と話していました。

 

判決が出る前の段階にも、守るべき期限がひとつ。

民法は、書かれた側が損害と加害者を知った時から3年のうちに賠償を求めないと、その権利が消えると定めています。

相手の名前が分からないあいだは、この3年は数え始められません。

2年かけて名前にたどり着いたいまは、ここから3年のうちに請求へ動く必要があります。

 

中傷するのは中高年の無職ばかりなのか

ネットでもう一つ目立ったのが、「やっぱり50代の無職か」という声。

自分も開示請求をしたら「生活保護受給者」と「無職」しか出てこなかった、と10月に投稿した橋本琴絵氏の言葉には、多くの共感が集まっていました。

たしかに、実際に開示した本人がそう言うなら、そう思いたくなりますよね。

ところが、ネットの炎上に加わる人を数で調べた研究では、少し違う顔が出てくるんです。

 

国際大学の山口真一氏が約2万人に行った調査では、炎上に加わる確率は年齢が上がるほど下がり、年収が高い人や子どもと同居している人ほど高い、という結果で、その後の約4万人の調査でも係長クラス以上の役職に就いている人が多かったと山口氏は話しています。

もちろん、炎上に加わることと、一つの家族を長く狙って書き続けることは同じではありません。

それでも、どうしてこれほど印象が食い違うのでしょうか。

同じ山口氏の調査では、そもそも炎上に加わる人はネットを使う人全体の約0.5%。

しかも加わった人に1件あたり最大何回書いたかを聞くと、多くは1〜3回で、51回以上書いた人も3%ほどいたそうです。

開示請求の対象になりやすいのは、何度も書き続けた人でしょう。

開示で名前が出てくる人と、書き込む人全体とは、そもそも別の集団を見ているのかもしれません。

 

調査の数字を見るかぎり、「書くのは決まった年齢や仕事の人」とは言い切れない。

そして相手が50代で無職だと分かっても、妻と子どもに向けられた2年分の言葉が軽くなるわけではありません。

払えるかどうかは相手の財産しだいでも、判決は10年残り、財産を隠せば罰がある。

無職だから取れない、で終わる話ではなかったということですね。

 

この記事で参考にした情報

  • 動画の内容=ユーチュラ「家族への誹謗中傷で開示請求 フィッシャーズ・シルクロードが特定した相手は『50代・無職』だった」(2026年11月2日)
  • 条文=民法169条・724条/民事執行法199条・205条・206条・207条・213条/破産法253条(e-Gov法令検索)
  • 炎上参加者の調査=山口真一氏(国際大学GLOCOM)の研究を紹介したTECH+(2016年4月5日)・PRESIDENT Online・弁護士ドットコムニュースの記事