2026年10月21日の夜、チケットの申し込みも、ネットショップの注文も、あちこちで一斉に止まりました。

きっかけは、ウェブサイトの裏側で動いている「PHP(ピーエイチピー)」というプログラムに見つかった、重い欠陥です。

国の注意喚起の下には「もう情報漏洩してんのに」という声も並び、自分の個人情報まで抜かれたのかと不安になった人もいました。

困ったのは、その日の夜が締め切りだった人たち。

ライブの抽選の申し込みや、通販の受注、大学の課題の提出まで、23時59分の締め切りを目前にして、画面が「メンテナンス中」に変わってしまいました。

では、間に合わなかった締め切りはどうなるのでしょうか。

実は、締め切りを1日延ばしたところもありました。

延長を出したのは、止まったチケットサイトではなく、公演を開く側です。

今回は、漏れたのは何だったのかと、延長のお知らせがどこに出るのかを、わかりやすく解説していきます。


昼すぎに届いた国の注意喚起

騒ぎの入口になったのは、国家サイバー統括室という国の機関が、その日の昼すぎにXへ出した注意喚起でした。

書き出しは「PHPのセキュリティチームが、重大な2件の脆弱性に関する注意喚起を行っています。」というもの。

続けて、日本時間の23時に公開される修正パッチを、すぐ当てられるよう準備してほしいと呼びかけていました。

PHPは、ウェブサイトの「裏側」を動かすためのプログラミング言語で、ログインや買い物かご、申し込みボタンを押したあとの処理などに広く使われています。

脆弱性(ぜいじゃくせい)は、セキュリティの穴のこと。

修正パッチは、その穴をふさぐための直しのプログラムです。

あの投稿の宛て先は、ウェブサイトを公開している会社や管理者。

同じ日には高市早苗首相も自身のXで「皆様に、今夜に対応して頂きたい大至急のお願いです。」と書いたと報じられていて、中身はやはり、公開しているウェブサイトでPHPを使っているかの確認と、修正パッチを当てる準備でした。

国の情報セキュリティの窓口であるIPAが準備として挙げていたのも、PHPを使っているプログラムの洗い出しや、修正をすぐ当てられる体制づくりで、どれもサイトを作る側・動かす側の仕事。

 

サービスを使うだけの人は、スマホで何も直さなくて大丈夫です。

国家サイバー統括室の投稿の下でも、「スマホの電源を切る必要はない」「アプリを消したり、パスワードを全部変えたりする必要もない」と答えている人がいました。

一方で、「つまり俺らは何をしたらええんや」という声も、いくつも並んでいます。

そう思うのも無理はなくて、目の前では、使っていたサービスが次々に止まっていきました。

「テレビで速報してないけど大丈夫なんですか?」と、家族に話しても伝わらなかった戸惑いを書いている人もいます。

テレビ局のニュースサイトでも、テレビ朝日系のANNに首相の呼びかけを伝える記事が出たのは、夜11時台のことでした。

 

今回は、修正版が出る前に、PHPの穴についての情報が海外の掲示板に漏れ出していたと報じられています。

漏れたのは、サイトに預けている私たちの名前や連絡先といった個人情報ではありません。

セキュリティ会社の説明では、修正版はもともと1日ほどあとに出る予定で、23時はそれを早めた時刻だったとのこと。

海外のセキュリティ会社watchTowrは、穴のひとつを使った攻撃を再現できたと明かしていて、国内のGMO Flatt Securityも、この穴を悪用できるとうたうプログラムがネットに出回り始めたと書き足しています。

だから、ふさぐ部品が届くまでのいちばん確かな守り方は、サービスそのものを止めておくことでした。

国家サイバー統括室も、修正パッチをすぐ当てるのが難しい場合は「ウェブサイト等を一時的に停止させることも、リスクを低減させるための有効策の一つと考えられます」と、Xで呼びかけています。

 

締め切り直前に止まったローチケ

メンテナンスが夜に集まったのは、修正版の公開が日本時間の23時だったから。

PHPの開発チームが予告した公開時刻は、世界の基準の時刻で21日の14時で、日本ではちょうど夜11時にあたります。

保育園の連絡アプリやネットショップの作成サービスは、それより早く、昼すぎから夕方にかけて止まりました。

イラスト投稿サイトのpixivは19時から、ウマ娘やグランブルーファンタジーなどのゲームは23時からメンテナンスに入っています。

チケット販売のローソンチケットは、22時45分からメンテナンスに入りました。

お知らせには、止まるものとして「チケット申し込み」や「ファンクラブ入会、継続、属性変更」が並び、終わりの時間は「未定」と書かれています。

ところが、ローソンチケットには、その夜の23時59分を締め切りにしていた申し込みもありました。

締め切り間際に申し込もうとしていた人ほど、画面の前で手が止まってしまったはずです。

 

ネットでも、締め切りとメンテが重なった人の声が次々に上がっていました。

  • 「やばいレポート締め切り近いのにあらゆるサイトがメンテ入ってて調べ物できない。終わった」
  • 「今日締め切りのASOBI TICKETの支払いしようと来たらPHP関連のメンテが入って終わりました」
  • 「例のメンテでweb class使えないから今日締め切りの課題出せないの笑えない」

大学の課題の提出に使うシステムも23時からメンテに入るとして、学生向けに「本日締切の課題がある方は、サービスの一時停止の可能性を念頭に、余裕を持って提出しましょう。」と呼びかける投稿も出ています。

仕事の連絡に使うチャットのサービスまで止まっていると書いた人は、「締切だったらと思うと胃が痛くなる」とこぼしていました。

ギリギリまで残していた自分が悪い、と書いている人もいて。

「とりあえず締め切り延長はしても良いと思うのよ…」と書いた人もいました。


延長のお知らせが出ていた場所

では、延長は出たのでしょうか。

ローソンチケットのお知らせには、止まるサービスの一覧と問い合わせ先が書いてあるだけで、締め切りについては一言も触れていません。

延長のお知らせを出したのは、その窓口で申し込みを受け付けていた公演の側でした。

アイドルグループの≠MEと≒JOYは、どちらもローソンチケットでエントリーを受け付けていて、23時半ごろ、公式Xに同じ文面のお知らせを出しています。

≠MEはファンクラブ向けの販売、≒JOYは全国ツアー東京公演の一般先行で、どちらも「ローソンチケットのシステムメンテナンスに伴い」受付の締め切りを1日延ばすとしていました。

新しい締め切りは、10月22日の23時59分です。

 

ネットショップでも同じことが起きていました。

受注生産のグッズを売っていたギタリストや、作品のプリントの注文を受け付けていた作家は、それぞれ自分のXで「受付期間を1日延長」「24時間期限を延長」と知らせています。

pixivが運営する通販サイトのBOOTHで商品を売っていたお店は、無料期間とセール期間をそれぞれ1日延ばしたうえで、別に告知していたプレゼント企画の締め切りは変えないとも書き添えていました。

同じお店の中でも、延びるものと延びないものが分かれていたんです。

延長を自分の名前で知らせていたのは、どれも公演やセールを開いている側でした。

サービスを止めるかどうかはサイトを動かしている会社が決め、締め切りをいつにするかは公演やセールを開く側が決める。

だから、延長のお知らせは、締め切りを決めた人のアカウントに出てきます。

 

間に合わなかった人が今日できること

修正版そのものは、予告の23時より少し早く、21日の夜11時前に公開されたとのこと。

pixivは23時30分にメンテナンスを終えたと知らせていて、ネットショップのBASEは22日の朝7時まで、グランブルーファンタジーも朝7時までの予定と案内されていました。

終わりの時間を「未定」にしたままの会社もあって、不安になりますよね。

ただ、ローソンチケットのお知らせには「本件に起因する不正アクセスや情報漏えいは確認されておりません」とあり、再開は「作業完了次第」と書かれています。

ネットショップのBASEも、同じように「現時点で、本件に起因する不正アクセスや情報漏えいは確認されておりません」と知らせていました。

 

締め切りが重なってしまった人が、いまできることは3つ。

  • 締め切りを決めた人の公式Xやファンクラブのお知らせを見る
  • メンテナンスのお知らせのページを、スクリーンショットで残しておく
  • 延長が出ないときは、その主催者やお店、先生に早めに相談する

1つ目は、延長の知らせを探すことです。

アーティストの公式X、ファンクラブのサイト、お店のアカウント、大学なら授業の連絡のページを見てみてください。

2つ目は、メンテナンスのお知らせのページをスクリーンショットで残しておくこと。

始まった時刻が書かれたお知らせがあれば、あとで相談するときに、いつから止まっていたのかを相手に見せられます。

 

3つ目は、延長が出なかったときに相談すること。

延長はあくまで締め切りを決めた側の判断で、必ず延びるとはかぎりません。

それでも、何も言わずにあきらめるより、止まっていた時刻を添えて一度聞いてみる価値はあります。

聞くときは、公演名や注文番号など何の締め切りだったのかを一緒に書くと、相手も調べやすくなるはずです。

 

「締め切りを延長しました」「再度お申し込みください」と書かれたメールやSMSには気をつけてください。

ローソンチケットのトップページのお知らせ欄にも、「ローソンチケットを騙った不審なメール」についての項目が出ています。

延長を確かめるときは、届いたリンクは押さずに、公式アプリやブックマークから開くほうが安心です。

延びた受付に申し込むときも、先にチケットサイトのお知らせで再開しているかを確かめておくと、二度手間を防げます。

国や首相まで呼びかけるような夜に重なったのですから、締め切りに間に合わなかったのは、ギリギリまで残した人の不注意だけのせいではない、ということですね。